脳に騙されている?認知的不協和が示すこと。

脳に騙されている?認知的不協和が示すこと。

とても素晴らしい理論がこの世には存在する。
だが一方、大抵の社会心理学的な手法は大体”言われてみれば当たり前”に終始している。
理論名を大仰に名付けているだけで、現実に活かそうと思ってもなぁ…というのが大半。
僕は趣味で結構、心理学的な資料を多く読むのだが、いかんせんこの気持ちは拭えていない。

しかし、『認知的不協和』 こいつは本物だ。

今日はこの認知的不協和のなにがすごいのかお伝えしたいと思う。

認知的不協和とは?

認知的不協和とは ” 自分の中にある矛盾を解消しようとする ” 反応を指す。

この説明をする際には大抵、イソップ寓話の”すっぱい葡萄”が引用される。

すっぱい葡萄のあらすじは下記の通り。

お腹を空かせた狐は、たわわに実ったおいしそうな葡萄を見つけた。食べようとして懸命に跳び上がるが、実はどれも葡萄の木の高い所にあって届かない。何度跳んでも届くことは無く、狐は、怒りと悔しさから「どうせこんな葡萄は酸っぱくてまずいだろう。誰が食べてやるものか」と負け惜しみの言葉を吐き捨てるように残して去っていった。(出典:wikipedia『すっぱい葡萄』

これを分解するとこのようになるんだ。

  • 心理:美味しそうな葡萄を食べたい。
  • 行動:食べようとするが、どうしても食べれない。
  • 不協和の解消:心理の変容。「美味しそうな葡萄を食べたい。」⇨「まずい葡萄だから食べたくない。」
  • 結果:行動(食べれない。)=心理(食べたくない。)

このように心理と行動が一致する傾向があるという現象を大仰に、『認知的不協和』と呼んでいる。

これは必ずしも心理を変容することに限らず、行動を変容することも同じなんだ。

例えばこの話を下記のように心理ではなく、行動を変容しても認知的不協和と言える。

  • 心理:美味しそうな葡萄を食べたい。
  • 行動:食べようとするが、どうしても食べれない。
  • 不協和の解消:行動の変容。「葡萄が高いところにあり飛び上がっても食べれない。」⇨「木を登って食べる。」
  • 結果:行動(食べれる。)=心理(美味しそうだから食べたい。)

食べたいという心理を変えず、飛び上がる行動をよじ登るという行動に変えたことにより、自己の矛盾が解消される。

ここまで聞いても、言われてみれば当たり前っちゃ当たり前なんだよね。

僕たちだって、

お腹減ったから何か食べたいって思ったら、

なにか食べようとするし、

今食べれなければ何か食べれるまで頑張る。

それでも食べれなければ、まだ食べなくてもどうにかなるはずだって心理を変容させる。

何がそんなにすごいのか。

この凄さを理解するには下記の事実を認識する必要がある。

フェスティンガーはこのような発言をしている。

人は考えてから行動するのではなく、

行動してからつじつま合わせとして思考が生み出されている。

根拠としてあげているのは有名な実験に下記のようなものだ。

これは認知的不協和理論の提唱者フェスティンガーが行った心理実験。

被験者Aに単調で退屈な作業を1時間させる。

作業内容は糸巻きをひたすら目の前に並べて、戻す。これを繰り返すだけ。

どう考えてもつまらない作業だ。

次に、作業をした被験者Aは次の被験者(ダミー)を呼ぶように指示して終了。なお、後続の被験者をダミーとしているのは、被験者Aが指示通り楽しかったか伝えたかを確認するため、本当の被験者ではなく研究員を使った。

その際、フェスティンガーは被験者Aに対して、「無理にとは言わないけど、もし良かったら次の人が緊張しないように、作業は楽しかったよ!とか伝えておいてください。本意じゃないこと言わせちゃうから1$差し上げます。」とお願いする。

続いて被験者Bも同じように作業。その後、フェスティンガーから同様の指示を受けるが、対価は被験者Aに払った1$ではなく、20$を渡す。

これを複数の被験者で繰り返す。

フェスティンガーはその後、意思と反した発言の対価に$を得た被験者A20$を得た被験者Bに対して、作業が楽しかったかどうかアンケートを取った。

結果:対価の低い被験者A被験者Bに比べて、「楽しかった」と答える率が有意に高かったのである。

フェスティンガーの考察をまとめると下記のようになる。

下記は同じだ。

  • 心理:作業は楽しくなかった。
  • 行動:報酬を得て、次の人に楽しかったと伝えた。

被験者A報酬:1$

  • 不協和の解消:心理の変容。「作業は楽しくなかった。」⇨「楽しかった。」
  • 結果:心理(楽しかった。)=行動(楽しかったという自分の発言)
  • 考察:自分が思ってもないことを人に伝えるには1$では不足していた。

そのため、不協和の解消には、行動(楽しかったと伝えた)に合わせるしかなく、心理(つまらなかった)を変え、(楽しかった)と変容させたのである。

被験者B報酬:20$

  • 不協和の解消:不協和は起こらなかった。
  • 結果:心理(つまらなかった。)+強制条件(20$)=行動(楽しかったという発言)
  • 考察:思ってもいない発言をする見返りとしての20$は妥当だった。そのため心理と行動の間のバランスを保てたため、不協和が起こらなかった。

以上のように、

人の心理というのはあらゆる環境条件によって無意識に変えさせられている。

というのがフェスティンガーが提唱した認知的不協和の言わんとするところです。

追加の実験では生物学的な反応も確認し、動いた後に意思が生まれていることが確認されています。

友達で勝手に試してみたので近々、レポートします。

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この本にかな〜〜〜〜り詳しく書かれています。