「読書 心理」”少年Aの深層心理” 連続殺人犯のメンタリティに迫る。

神戸児童連続殺傷事件。
非常にセンシティブな話題だ。
この事件をあなたはご存知だろうか。
1997年兵庫県神戸市にて発生した猟奇的連続殺人である。
有名なのは自分の通っている中学校の校門の前に、自分が殺害した男児の頭部を置き、射精までしてしまったというやつだ。
『何がどうなっているのかわからない。』
僕が初めてこの事件を知った時、直感的に思った内容はこうだった。
殺したことにも驚きだが、頭部を持ち歩き学校の校門に設置、それで射精って、、、
僕には理解の域を越えていた。
人を理解するには会うのが一番手っ取り早い。
しかし、会えない・会ってはいけない人もいる。
それが少年A・酒鬼薔薇聖斗として知られる犯人だ。
僕が今回読んだのはこの事件の加害者のメンタリティを分析した本だ。
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僕が本書を読むきっかけとなったのは、世の中のいろんな人の考え方を知りたいというただの好奇心だ。
自分が予想もできない思考パターンを持つ犯人がどう考えていたのか、またなぜこのような発想に至ったのか。
そういう人間になるまでの経緯も含めて、
僕は知りたかった。
※なお実名はすでに判明しているのだが、僕は別に犯人攻撃がしたいわけではないので控える。
気になる人は別途ググってみてほしい。
本書はそんな僕の気持ちを見事なまでに刺激した、臨床心理士の洞察を交えた解説書である。
少年A、彼のパーソナリティを知る上で最も重要なのは分裂病(現在名:統合失調症)と言われる精神病だ。
本書ではなぜこうなったのか、
そしてこの病気における内なる苦悩、
そして犯行に至るまでの思考過程、
さらに犯行後の感情が描かれている。
ちなみに分裂病(統合失調症)とは本書ではこのように説明されている。
精神分裂病質者(schizoid)というのは、その人の体験の全体が、主として次のような二つの仕方で裂けている人間のことである。つまり第一に世界とのあいだに断層が、第二に自分自身とのあいだに亀裂が生じているのである。・・・・・・自分自身をひとりの完全な人間としてではなく、さまざまな仕方で<分裂>したものとして体験する。 (引用:同書p88)
つまり、自分という”意識”と自分という”肉体”が分離しているイメージ。
例えば、
自分の身に起こっていることが他人事、
また自分の感情は意識しなければ発現しない。
このような状態だ。
とにかく読み進めていくたびに感じるのは、どぎつく心にのしかかる苦しみだ。
その辺の小説では決して感じることのない、あまりに荒んだ心の内側。
そして殺人を犯してそれを極上のものとして楽しみつつ、一方で苦しむ犯人。
本書には小説にはないリアルで生なましい現実が記されている。
内なる苦悶を抱える犯人の極上な喜びを感じる様子。
苦悶と喜び、
この矛盾した感情が同居する犯人のパーソナリティとはなんなのだろうか。
”事実は小説よりも奇なり”を地でいくような内容だ。
ところどころ犯人の手記を参考にしながら進めており、その言葉が見つからないほどの恐ろしさが伝わってくる。
読了後はあまりの重みに僕はブログで書く気にはなれなかった。
言い訳をするとそのせいで少し内容を忘れてしまった。
それほどの内容となっている。
これは決して大衆向けの本ではないと思う。
むしろ、好奇心程度で気になったならば、辞めといたほうが良いとお伝えしたい。
ひたすらに心地悪いからだ。
事件を掲載しているサイトは数あれど、ここまで加害者側のメンタリティを露わにしている書籍はあまりない。
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