「小説」1973年のピンボール 挫折した

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長年、喰わず嫌いをしていた作家がいる。

村上春樹さんだ。

ハルキストなる言葉が流行りだすとともに、マジョリティになることを嫌がる気持ちが僕の読書欲を阻害していた。

どれほど面白いのか、そういうことではなく、何か嫌だった。

だから僕は村上春樹さんの作品を読まずに生きてきた。

読んでから言えよ。

 

こんな言葉が僕の心の中で言っているにも関わらず、その心にそっと蓋をしていた。

数年が経ち蓋をしていたのもすっかり忘れた頃、ブックオフにていつもはスルーする村上春樹コーナーにたまたま目が止まった。

大人になった私は、過去の蓋を取り払い、いい加減読めよ。。。という心の声に従い小説を購入することにした。

それが本書 1973年のピンボール 村上春樹著 講談社1980年初版

実際のところどうだったのか
読み進めていくと、というかしょっぱなから、出鼻を挫かれる。

”好き嫌いが分かれる”ハルキストという言葉が流行った理由が理解できた。2ch界隈でもネタにされていたため、まどろっこしい表現というのは知っていたのだが。。。

まさにその通りだった。

まるで梅雨に降る雨のように、一息つく間もなくひたすら降り注ぐ独特な比喩、そして体育祭で本番を今か今かと待ち遠しく待機する生徒にとっての校長挨拶がごとくひたすらに長い一文に、僕の頭は目隠しをされたまま迷路に閉じ込められた感覚と表現すべきほど、困り果てた。

僕は思った。

だめだ。ストーリーわからん。

そして途中で一時休止し、何でついていけないのか考察を始める。

僕は小説はあまり読まない。それゆえ想像力が欠如している感は否めないだろう。


具体的に何が僕にとって理解を苦しめたのだろうか。
3つほど思いついた。

◇まずストーリー

なんの説明もなくよくわからん登場人物が出てくる。かと思えば全く別の登場人物が別の行動をしているシーンに移り変わる。これ自体はよくある構成だろう。伊坂幸太郎作品でも、最初はそれぞれ行動し最後で出くわすというのはよくある。

ただその前にはそれぞれの登場人物は何をしているのか、どういう人間で、ストーリーにおいてどういう立ち位置なのか、ある程度わかる。

しかし本書にはそれがなかった。

後でわかるといえばそれまでだろうが、何もわからずに読み進めるほど眠くなることはない。文字のゲシュタルト崩壊を起こした僕には苦行と言わざるを得なかった。心を乱した僕はそっと床についた。

◇何より時系列もバラバラだ。

小説好きにはたまらんのかもしれない。

どうなってるんだ!!どうなるんだ!!こんな感情に支配されて読み進めるのであろう。僕のHPはすでに0だった。

登場人物が巡りあう兆しすらない。そっと僕は床についた。

◇フォトジェニックスポットに群がるインスタグラマーのように群がる比喩の大群

いちいち比喩を入れるな!!リズムが悪くなる。

と思ってしまった。

ほぼすべての文章に比喩が入っている。これは何の話なんだ。

比喩が前面に出てきて、主役である登場人物のことなどすっかり忘れてしまう。僕は路頭に迷った子羊になった。羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、、、僕は床についていた。

具体的には以上の3点が僕の中で受け入れられなかった点だ。


  • しかしまだ僕は挫けない。次の策だ。

「作品についてあまりに無知すぎたのではないか。」そう仮説を立てた。

何か前情報を得たら一気に面白くなるんじゃないだろうか。

そうだ、グーグル先生に教えてもらおう。

一縷の望みをかけ祈るように検索ボタンをクリックした。

(グーグルホームページよりキャプチャ)

良さげなサイトはないかな。ドキドキ!!!下へ下へとスクロールする。

一番下までたどり着き、ふと”その他の検索ワード”が目に入る。

そこには驚くべき候補が・・・。

※グーグルホームページよりキャプチャ

つまらない。

 

ふざけんなっっっっw

僕は亜音速でそっと本を閉じ、ピラミッドを建設した古代エジプト人のように丁寧に積読の山へと本を置いた。


  • まとめ
    本書は小説を読み慣れている人、機知に富んだ人には伝わるんだろうなと思う。

amazonの評価でもきちんと書評できている人がいる。

しかし僕のように学術書や論文ばかり読んでいる人間には”まどろっこしい!!!”と感じ反射的に苛立つ。まるで黒々とした煙が脳を燻るかのように思考を停止させる。

誤解のないように言っておくが、僕もちょくちょく比喩や面白い表現を混ぜるのは好きだ。情景がわかりやすいし、表現力の高さに感銘を受けることもある。

しかし僕にとって本作は違った。

多すぎるのである。

これは僧侶が滝に打たれるように私にも苦労をしろという神の掲示なのか、とも考えた。

しかし小説にはリラックスを求める私としては、まるで剣山の上でマッサージを受けてるような気さえした。まるで落ち着かない。

全国の村上春樹氏ファンには大変申し訳ない。

私はどうしても好きになれなかった。

良い読み方、書籍の背景等あれば是非教えて欲しい。

その際は再挑戦してみたいと思っております。


◇リンク

1973年のピンボール 村上春樹著 講談社1980年初版